遠い鳥、近い島

屈託のない文章を書きましょう

ライブの感想(2025/04/25)

悪魔の産声!

友人に話したら「それめっちゃおもろい話だからブログに書きなよ」と言われたので書くけれど、でもこれってライブの感想じゃなくない? ライブの感想としてこんな話書いていいの?
でも、そんなふうに“ライブ的なるもの”と“ライブ的ならざるもの”をわけてきたからこそ、10年もの間どこにも書かずに貯めてしまっていたものがあるわけだ。そうか。じゃあ書くか。やだな〜。
いや、書くわ。書きます書きます。

「音楽を聴きに行ってるんだから、感想を書くなら音楽の話をしないとさ」って素朴に思ってるんやけど、ライブというイベントの中には音楽を聴く以外の場面も多くあるわけ。例えばファンサ。例えば物販での立ち話。例えば追っかけてるバンドのメンバーと同じフロアに立って同じ音楽を聴く体験。

今日は、そういう、音楽を聴く以外の場面の感想を書く。例によってキショい話にはなるけど倫理と人間としての心は守るのでご安心あれ。

でさあ。
どっから書くかな。

「それめっちゃおもろい話」と言った友人(以下、A)はBUMP OF CHICKEN のファンなので、「2000人収容以下のライブハウスには行ったことがない(原文ママ)」らしい。それを聞いた私は「は???」と野太く威圧した。2000人以上が入るハコはホールであってライブハウスじゃないやろ。

私がこれまでに経験した最大のハコは高松DIME。調べたら300人収容らしい。最小は岡山ペパーランド。180人。(あそこ180も入るんか? 80人くらい盛ってないか?)
まずはAのために、この認識の差を埋めたい。

私がよく行くサイズ感のライブ(動員30〜50人レベル)だと、ライブが終わったあとに誘導員がやってきて客をハコから追い出すようなことはしない。
たぶん残ろうと思えば店じまいまで残れる。なんならライブ後にそのまま打ち上げがはじまって、観客と出演者がフロアで酒を飲んで食っちゃべっていたこともある(コロナ禍前)。

ライブ中も出演者との距離が近い。観客用通路とスタッフ用通路が分かれていないので、みんな出番じゃないときはフツ〜にウロウロしている。物販で店番するために客席を横切ったり、喫煙所で一緒に煙草吸ったり、トイレで出くわしたり。
「あ、ども……」「お〜来てたんや! じゃ、またあとで」こんな感じ。

昨日の仙台enn2。ライブ後。
物販の待機列がなかなか減らないので、私はハコの壁に背中をつけて、古墳シスターズが片づけをするのを眺めていた。
なぜか? 好きなバンドのメンバーが片づけしてるとこなんか見たいに決まってるやろ。

ステージまでの距離、およそ2m。「そのヒモはなにに使うヒモなんやろか……」とか考えながら、松本くんがなにかしらのコードを巻き取っているのを観察した。
松山さんの足元にはセトリが書かれたA4のコピー用紙があった。よく見たらサインしてあるやんけ。なんのために?

そのとき、私と同年代かなって雰囲気の女性が松山さんに近づいていって「よかったです〜」的なことを話し始めた。そして、「セトリの紙欲しいです!」と言って手を伸ばした。ああ、こういうことが起きるから事前にサインしてたわけか。セトリをゲットした女性はうれしそうに帰っていった。

待機列はまだ減らない。というか増えてる。

次は12歳くらいの女の子が母親らしき人に連れられて来て、「カブトムシ」のシングルを松本くんに渡してサインを求めた。
「ペンがない」「どこだ」「小幡が持ってる」云々。無事4人のサインをゲットして、女の子は帰っていった。

それから、ふわふわのスカートを履いた脚の細いめちゃくちゃかわいい女の子が来た。知り合いらしき男の子と就活がどうとか話していたから(意識して聞いたわけじゃないが聞こえた)私よりも10歳くらい若い。「最高でした〜」からはじまり、セトリをゲット。帰っていった。

この間、約15分。私の心の声。

「あ゙あ゙!!!!!!!!!!!!!!!(大音量)
私も話しかけてえなあ!?!?!?!?!?(轟音)
セトリの紙もほしいなあ!?!?!?!?!?!?(爆発音)」

Aにこれを話したら「なら話しかけろよ(笑)」って爆笑されたんですけど、それができてりゃこんなことになってねえんだわ!!!!!!!!!!!
もうダメなんだって私は自意識がユーラシア大陸よりもたくましく勃起してるから!!!!!!!!!!!!!

あと2枚残っているであろうセトリの1枚をいや欲を言えば2枚ともぜひ持って帰りたいでもほかの人のほうがもっとほしがってるかもしれんし私が持って帰ったらCDケースに挟んでしまっとくだけだけどほかの人ならきっと飾って大事にしてくれるはずでそういう扱われかたのほうがセトリにとってはなんぼも幸せなんですよあと話しかけるっつってもなにを話すんだっつー話ですわ私如きがここで「よかった」という気持ちをありきたりな言葉で伝えたとしてもカスの表現力では感じている「よかった」の2%も伝わらんのやわ私は彼らを目の前にするとなにひとつうまくしゃべれんのですから!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

私はそれこそ10年前からずっと欲しいんですセトリの紙が。サインが。そのジーパンに貼られてるパスシールが。なぜか? 好きなバンドのメンバーの筆跡なんかほしいに決まっとるやろボケ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
でももらったことがない。なぜか? 自意識過剰だから。

もちろん話しかければ平気でくれるんやと思う。彼らはとても気前がいいから。私がのたうち回っていると知ったら気を遣ってくれるような人たちだから。
でも気を遣われた時点で私はビンビンの自意識からレッドカードを突きつけられて東尋坊に身を投げる。東尋坊がどこにあるかは知らん。有言実行するために検索するのが面倒だから気なんか遣わず一生ほっといてくれ。

ぐあああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!

私がほぼ唯一所持している古墳のサインは『ボツ集』にもらってるんですけど、自分が古墳にサインしてもらっているっていう事実に耐えられなかったんで人伝てに依頼して偽名宛で書いてもらいました。人生損しとるよホンマ。

待機列、減ってきた。
私はいそいそと物販前へ移動した。

先々週のライブ後に手持ちの古墳のCDを確認して、一通り聴き直した。そのとき『ハブ・ア・グッドバイ』を持っていないことに気がついて「やばい!(?)」と思ったので、今回は『ハブ・ア・グッドバイ』を買うと決めていた。

店番の小幡さんはとても愛想よく対応してくれた。小幡さんと話しているとなんだかほっとする。
「『ハブ・ア・グッドバイ』を……」と私が声を掛けると、小幡さんは「あ、はい」と顔をあげてくれた。
たぶん彼は、私の次の台詞を「……を聴いて感動しました」的な感じで予想していたと思う。しかし、私の口から出たのは「……をください」だった。
小幡さんは「あ、ご購入ですか?」とちょっと驚いた感じで言った。「ありがとうございます」
クッッッソオォ゙〜〜〜〜〜〜〜〜恥ずかしい。持ってないのがバレた。サブスクでは聴いていたんです信じてください……。

それから私は、コードを巻く松本くんを眺めながら頭の中で何度も練習した「サインを要求してもいいですか」(要求ってなんだよ)を、勇気を振り絞って言った。
小幡さんは「もちろんです」とうなずいたあと「ペン持ってますか?」と言った。
鞄の中に水性ボールペンがある。これでお願いするか? いや、だめだ。インクの乾きが遅くてこすれて伸びてしまう未来がオチまで見えた。
女の子の「カブトムシ」にサインをしたペンは、いまはステージ上か。そう思って振り返ったら松本くんがいた。目が合うなり「ペン持ってます?」と訊いてしまった。
ああ〜〜〜違うって〜〜〜!! まずは「お疲れ様です」だろうがバカヤロウが〜〜〜〜〜!!!

「あるよ」
松本くんは持っていたペンでさらさらっとサインしてくれた。ペンが小幡さんに回った。松本くんは「松山呼んでくるわ」と言って出ていった。
サインをもらってテンションが上がった私は買う予定がなかったうどん(グッズ)を買った。
そうこうしていると松本くんが帰ってきたのだけれど、松山さんはおらず、一人だった。うどん(グッズ)を鞄にしまいながらそれを横目で確認し、「見つからんかったんやな」と思った。

なんとなく「あのへんにいそう」の見当がついていた私は、代わりに探しに出ようとした。すると、松本くん(ほかのファンにつかまってツーショを撮っていた)が「ごめん、見つからんかった。外の喫煙所とか、そこらへんにおると思う」と言った。
「探してきますわ」
私はCDを持ち、ハコを出た。出がけにラースさんがいたので物販に戻ってペンを借りてサインを頼んだ。

ちょっと話がそれるけどラースさんは古墳シスターズのメンバーの中で一番落ちついている。
というか、たぶん人類の上位10%に入るくらいには落ち着いている。めちゃめちゃ気が利くし優しい。ドラムも超うまい。年下だと知って仰天した。ファンです。

さて、松山さんを探そう。
enn2を出て、いそうなほうに歩いていくと、おるやんけ。
松山さんは例のふわふわのスカートの子と写真を撮っていた。私は道を挟んだ対岸で待った。丁字路の突き当たりの店のシャッターに女性の生首の絵が描いてあったのでそれを見ていた。

撮影が終わると、松山さんは芝生が植えられた小路みたいなところを奥へ入っていった。
小路には電燈が2本立っていて、コンクリートで作られた箱型のベンチが点々と置かれていた。
松山さんは煙草に火を点けると電燈とベンチの隙間にしゃがんだ。ひょろ〜と高い身長はしゃがむと120サイズの段ボール箱くらいになって、ベンチにすっぽり隠れて小路の外からは見えなくなった。

完全にオフだ。
っていうか、いまわざと隠れたよな? 疲れてる?

咄嗟に「話しかけずに帰ろう」と思った。次に東京あたりまで来てくれたときに会って頼めばいいや。でもいま話しかけなかったら、私はなんでどうでもいい生首なんか眺めて待ったんだ?

あと1秒気づかれなかったら帰ろう、と思ったタイミングで目が合った。
「お」
松山さんは立ちあがった。一瞬でひょろ〜と高くなった。ああ、ホンマすみません。原罪。

「サインを要求したくて」と、私は言った(要求ってなんだよ)。
「ええよ。ペンある?」「物販に……」とか言うてると小幡さんと松本くんが来た。
「松本くん、ペン持ってます?」
「いまはラースが持ってるな」
「ぬわ〜〜」
すると、古墳シスターズのたまり場と化した小路にカップルらしきファンがきて、「ペン、ありますよ」と貸してくれた。
「ありがとうございます」
私は女性からペンを受け取り、松山さんに渡した。

ついに4人分のサインが集まった!!

ホックホクでCDを受け取る私。
松山さんはペンを女性に直接返そうとした。いや待て、私が借りたペンを私が返さないのは道理に反しとるんとちがうか? だけどファンとしては推しから直接ペン渡されたいよな!?
どうすればいい!?!? ファン心理!? 道理!?!? ファン心理!?!?!? 道理!?!?!?!?
いやここは道理を取る!!!!!!!!!

私は松山さんの手からペンをむしり取り、間違って降りた高速道路のICくらいに不必要な経由地になってしまった。女性が気にしたかどうかはわからないけれどマジでごめんなさい。あれはマジで違いましたよね。どこの馬の骨ともわからん眼鏡の女よりも松山航がいいですよね。ホンマすみません。ホンマに申し訳なく思ってます。許してください。

このエピソードを聞いたAはヒイヒイ笑っていた。
「たぶんだけど、あなたがそんな葛藤をしていたことなんて1mmも気づかれていないよ。顔に出ていなさすぎて」
こうやってブログを書きながら、自分でもそう思いはじめた。私は感情や思考が言動に出ていなさすぎる。サボテンのほうがコミュニケーション能力が高い。

せめてもの謝罪の気持ちを込めて、私は古墳シスターズとカップルの写真撮影(ラースさん不在)を買って出た。潔癖症で他人のスマホを触るのは正直かなり苦痛なのだけれどそんなこと言うとれんわ。
スマホの画面に5人を収めながら、「私、この人たちと並んで写真撮ったことないんよな」と思った。
松山さんのジーパンにはまだパスがくっついていた。オレンジ色のパスだった。

「ほんなら、明日もがんばってください。今日はありがとうございました。運転に気をつけて。じゃ、また来ます」

古墳シスターズと写真を撮る日なんか一生来ないよ。
悲しくはないよ。強がりじゃねえよ。
THEまっすぐズも言うてたやんけ。私の愛情表現に文句を言うなよ。クソが!!!!!